ウレタンフォームは洗濯(水洗い)できない
小型のカーペットとして使われるラグは、家庭の洗濯機でも洗える製品があります。洗濯表示で洗えるかどうかや手洗い、あるいはドライクリーニングなどの指定が確認できるはずです。
しかし素材がウレタンフォームの枕やマットレスは、本体を洗濯してはいけません。カバーやシーツの洗濯に留めるようにしてください。
それではクリーニングに出すのはどうなのでしょう。
まずはウレタンフォームが洗濯できない理由について、詳しく解説していきましょう。
理由①水に弱く劣化しやすい
軟質ウレタンフォームは軽くクッション性や耐久性に優れ、硬さのバリエーションが豊富なことから、主にクッション性を活かした製品に広く使われています。
低反発枕などはその代表ですが、ウレタンは水に弱く劣化しやすいという特性があります。ウレタンが水に濡れてしまうと、加水分解という現象が起きます。
加水分解とは水分や空気中の湿気によって発生する分解反応のことを指します。つまりウレタンが加水分解を起こすと、型崩れや弾力が失われたり、ひどいときにはベリッと千切れたり粉が出ることもあります。
洗濯機の中で粉々になると後始末が面倒
仮に低反発枕を洗濯機で洗うと、劣化していた場合にはバラバラに分解し、原形をとどめず粉のようになってしまうことがあります。そうなるとその洗濯機はそのままでは使えません。
場合によっては業者に依頼して、分解掃除をしてもらうことになります。費用は一概にはいえませんが、それなりにかかるのは容易に想像ができます。洗濯機を買い換える方がいいかも知れません。
後始末が大変なので、間違ってもウレタンの枕やクッションを、洗濯機で洗うのはやめてください。後悔することになります。
理由②なかなか乾かない
ウレタンフォームは表面は膜で覆われていますが、中心部は発泡体となっています。ですから中心部の発泡体が水分を含んでしまうと、表面の膜により保存されてしまい、なかなか乾かないことになります。
抗菌処理が施されていても、水分を含むことで雑菌が繁殖することがあります。またウレタンフォームは、干す際には陰干しが基本です。
なかなか乾かないからといって、炎天下に晒すような真似はしないでください。なかなか乾かないという状況は変わらないからです。
紫外線に弱く天日干し不可
ウレタンフォームは水に弱いだけではありません。紫外線にも弱く直射日光を当てると、酸化して劣化することになります。光劣化や光酸化と呼ばれる現象ですが、これもウレタンフォームの特性なのです。
ですから水に濡れたり、あるいは誤って洗ってしまっても、ウレタンフォームを天日干しにはできません。陽の光が弱い冬場ならとお考えになるかもしれませんが、直射日光に含まれる紫外線に弱いのですから結果は同じです。
ウレタンフォームは風通しのいい場所で陰干しにするしかありません。
乾燥機にもかけられない
ウレタンフォームのウィークポイントは水分と紫外線だけではありません。高熱にも弱いので乾燥機もご法度です。また脱水機にかけるような乱暴なことをすると、型崩れを起こして枕やクッションの用をなさなくなるでしょう。
場合によってはボロボロになってしまうかも知れません。ウレタンフォームは衣料品ではありません。衣料品のように洗濯機や乾燥機を使えるわけではないのです。それらを使用できるのは、カバーとシーツだけです。
クリーニング業者もなかなか見つからない
ウレタンフォームが水分や紫外線、高熱に弱いことはわかりました。家庭の洗濯機で洗えないのなら、クリーニング業者にお願いするのはどうなのでしょう? クリーニング業者なら、家庭ではできないドライクリーニングをしてくれますが・・
じつはウレタンフォームはドライクリーニングもダメなんです。ドライクリーニングは石油系の有機溶剤を使います。ウレタンフォーム中心部の発泡体が有機溶剤を吸うと、水分と同じように乾燥が困難になります。
ドライクリーニングといいながらドライにならないわけです。ですからウレタンフォームのクリーニングを請け負う業者は、無いと思った方がいいでしょう。仮に見つかったとしても、それなりの費用が発生するので、得策とはいえないかも知れません。
ウレタンフォームを汚して洗濯したいときの対処法
ウレタンフォームは洗濯機もドライクリーニングもダメなわけですが、それでは汚してしまった場合はどう対処すればいいのでしょうか。まずバケツか洗面器にぬるま湯を入れてください。
そして中性洗剤を少量加えます。タオルを浸して固く絞ってください。そのタオルでウレタンフォームを拭きましょう。加齢臭やミドル脂臭なら、これで十分落とせるはずです。
汚れを落としたらしっかりと水拭きをして洗剤を残さないようにしましょう。なお、早く乾かしたいからといって、ドライヤーなどは使わないでください。ウレタンフォームは熱に弱いので、変形や型崩れをしてしまいます。
新品の匂いが気になるときは陰干し
ウレタンフォームの製品は、新品の時には独特の臭いがすることがあります。これはウレタンを製造する際に使われる、アミンという物質が残ることが原因です。
アミンは多くの人にとって不快な匂いなので飛ばしてしまいましょう。その方法はシンプルです。風通しの良い場所で、2〜3日陰干しをしてください。湿気とともに匂いも飛びます。
室内に数日放置してもいいでしょう。アミンの匂いは徐々になくなります。なお、アミンは直接体に害は及ぼさないので、そこはご安心ください。
どうしても汚れが除去できなければ捨てる
中性洗剤を染み込ませたタオルで拭っても、どうしても汚れが除去できなければ、いさぎよくあきらめて捨てましょう。汚れた枕やクッションを、そのまま使い続けるのは不衛生だからです。
枕やクッションは、使っていくうちに徐々に劣化しますから、寿命がきたものと考えましょう。なお、捨てる際には自治体が定めたゴミの分別に従いましょう。
ウレタンフォームは一般可燃物に指定されるのが普通ですが、自治体によっては異なるケースもあり得ます。
次は洗える素材に替えるのもあり
洗えないウレタンフォームの枕から、洗える枕に買い替えるのも1つの方法です。素材がポリエステル綿やファイバー、あるいはパイプであれば洗うことができます。
ただし注意していただきたいのは、必ず洗濯表示を確認することです。洗えるとはいっても洗濯機で洗えるのか、手洗いのみなのかは製品により異なります。
また洗う際の水温が指定されていることもあります。例えば30度や40度といった具合です。これらの指定を守らないと、クッション性が悪くなるなどの不具合が起きる可能性があります。
ウレタンフォームをすでに洗ってしまった場合
もし誤ってウレタンフォームを洗ってしまったら、次の手順に従って対処してください。まず、洗ったウレタンフォームを、そっとカバーに包みます。そしてタライなどの上で手を使って優しく水分を押し出してやります。
強く乱暴に押してはいけません。また絞ることも厳禁です。これで原形をとどめているなら、気長に陰干しをして水分が抜けるのを待ちましょう。最低でも1週間は干すようにしてください。
完全に水分が抜け、弾力や厚みに変化がなければ、使っていただいて構いません。
いっしょに洗った衣類には害はない
仮にウレタンフォームと衣類を一緒に洗ってしまったらどうなるのでしょうか。そのウレタンフォームが古く、加水分解により粉々に飛び散ってしまわない限りは、衣類にダメージはないのが普通でしょう。
ただしウレタンフォーム特有の匂いが移る可能性はあります。気になるようでしたら、再度洗濯をするようにしてください。なお、できればクリーナーなどで洗濯機を掃除してから、次の洗濯をするようにしましょう。そうすれば問題は起きないはずです。
厚みや弾力性がなくなっていたら交換しよう
ウレタンフォームは丁寧に使っていても、経年劣化は進むものです。少しずつ進行するので気が付きにくいのですが、以前よりも厚みや弾力性がなくなっていたら、買い替えどきだと思ってください。
定期的に陰干しをするなど、メンテナンスに気を使っていても、ウレタンフォームは数年で寿命を迎えます。思い切って新しい枕にしましょう。そもそも快適な眠りが目的なわけですから、その目的から外れてしまっては意味があるとはいえないからです。
ウレタンフォームを洗濯しなくても清潔に保つ方法
ウレタンフォームの枕は洗濯をしなくても清潔に保つ方法があります。まずは枕カバーをこまめに洗濯をして交換することです。2〜3枚用意しておくといいでしょう。
また枕カバーの上からバスタオルを巻くのもおすすめです。これもこまめに洗濯しましょう。ほかには枕パッドやプロテクターを使う方法もあります。枕カバーやバスタオルと同様に複数枚用意しておくといいでしょう。
ただし枕パッドとプロテクターは似ていますが細かな違いがあります。それぞれ解説していきましょう。
厚めのパッドを使う
枕パッドは枕の上にのせて使用する寝具です。枕カバーのように完全に覆ってしまうのではなく、表面だけゴムバンドで固定するタイプが一般的です。サラッとした素材で機能性に優れているものが多く、吸湿や冷感効果を気軽に実感できます。
枕にそのまま付けても良いですし、枕カバーの上から重ねて使うこともおすすめです。厚めの枕パッドなら汗などから、枕本体を守ってくれます。ただし枕パッドはあまり知られていないので、寝具店などでも目にする機会は少ないかも知れません。
シーツの上にのせて使う敷きパッドの枕版ですが、冬場に役立つ温かいものや夏場に適したひんやりするものなど、さまざまなバリエーションがあります。季節や目的に合わせて選びましょう。
プロテクターを使う
枕プロテクターとは枕カバーの概念を一歩進めた商品といえます。すなわち汗やよだれ、尿や血液などの浸透を防ぎ、はがれた皮膚や皮脂、フケやダニなどの侵入も防ぐことを目的としているからです。
枕プロテクターは生地と防水膜の二重構造になっているのが一般的で、こうしたタイプであれば大切なウレタンフォームの枕本体を、完全に守ってくれるでしょう。
吸水速乾加工が施されていれば、汗を吸っても素早く乾燥させ、サラサラな感触を保ちます。さらに抗菌防臭加工がなされていれば、雑菌の繁殖や嫌な匂いも防げます。
普通の枕カバーよりもやや価格は高いのですが、ウレタンフォームの枕も高価ですから、完全に守りたいのなら枕プロテクターの方がいいでしょう。