テンピュール枕は洗濯できない
睡眠の質を上げ頭痛の改善効果も期待できるテンピュール枕。
形状も工夫されているものが多く頭を乗せるとピタリと寝る姿勢が決まります。
でも問題があります。洗濯ができない。
これは困ります。
とりわけ、おじさんの場合は大変です。年々強くなる加齢臭に加えてヨダレの臭いもプラスされもう耐えられません。
形や素材が良いのは分かっていますが、とにかく臭い。頭をすっぽり包み込み最高の寝心地なのですが、不衛生なのは困ります。
できればジャブジャブ洗いたい。しかし、洗えない。
なかには枕についた洗濯表示タグに、洗濯桶のマークとタンブル乾燥可能のマークがついているものがあります。
これは洗えますが、こういったケースはレアです。
たいがいは洗えません。
ならどうすればいいの? コインランドリーや手洗いならいいのかな?
ここではそんな「洗いたいけれど洗えない。どうすればいいの?」といった疑問に回答します。
理由①素材のウレタンは水で劣化して寿命が縮む
テンピュール枕の中身の素材にはだいたいウレタンが使われています。
テンピュールの語源はTemperature(テンパレイチャー=温度)とurethane(ウレタン)です。
アメリカ航空宇宙局 (NASA)が開発したのがもともとのスタートで、ロケット発射時や帰還時に宇宙飛行士にかかる重力加速度を緩和することが目的でした。
だいたい座席の素材に使われていますが、ウレタンは重さを吸収するという点では大きな力を発揮します。
ただ、確かにウレタンはすぐれた素材ではありますが弱点は水です。
ウレタンに水を加えると反応が始まり酸とアルコールに分解されてしまうのです。
加水分解というのですが、こうなるとゴム状のウレタンの表面がベトベトになってしまいます。
なかには硬質プラスチック状のウレタンもありますが、この場合、ひび割れてボロボロになります。
理由②乱暴に洗うとちぎれる
ウレタンはもともと天然ゴムの代替品として開発されました。そのため伸縮性があり強度は天然ゴムの5倍から8倍あります。ストレッチが効いていますからスポーツウェアや下着のほか水着、靴下、ストッキングなどにも多く使われています。
そのうえウレタンは軽いため、お年寄りのウエアなどにもよく使われています。
ただ、水や湿気のほか温度変化にも弱いといった問題があります。要はデリケートなのです。
そのため乱暴に扱われるのを嫌います。
劣化も早く伸縮性はあるものの劣化が進んでいる場合は無理に引っ張ったり、押し込んだりするとちぎれてしまいます。いろいろな力がかかる洗濯は要注意なのです。
コインラインドリーでも洗濯する場合などはとりわけ注意してください。
テンピュール枕のなかには洗濯が可能なものは基本的にありません。
洗濯可能なものは洗濯タグに洗濯槽のマークがついていますので「あっ、これは洗濯ができるんだ」と確認できますが、乱暴に扱うのは危険です。
たくさんの衣類と一緒にコインランドリーの洗濯槽に押し込めると、ただでさえ水を吸って重くなっているところに、回転時や取り出し時に過度な負荷がかかってしまいちぎれる危険性があります。
コインランドリーの洗濯槽は家庭用の洗濯機に比べると大きいため、テンピュール枕もそのままスポンと入ってしまいますが油断は禁物です。
高速で回転しますから他の衣類がテンピュール枕に絡みついてしまうこともあり、力ずくで無理にほどこうとするとその力でちぎれてしまうことがあります。
「とにかくやさしく」というのがテンピュール枕の扱いの基本です。
理由③水分を含むとなかなか乾かない
テンピュール枕は頭の重量をしなやかに吸収してくれるのでフィット感は抜群です。
高さを確保し厚みを持たせたものも多いのですが、万が一、水を含んでしまうと厄介なことになってしまいます。なかなか乾きません。
しかし慌ててはいけません。
無理に脱水しようと力をかけると強度が高くない分、場合によってはちぎれてしまうケースも少なくありません。
テンピュール枕を脱水機にかけるのは基本NGです。
「それなら乾燥機は?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
これもNGです。
ウレタンは温度にも弱いのです。
ウレタンゴムの場合なら80℃以上の温度になると組成が破壊されてしまいます。
耐熱限界温度は100℃ですが、これはギリギリ上限という意味で安全に使用するには80℃が限界です。
80℃を超えると溶けてくる可能性がありますし、溶けなくても強度は確実に劣化してしまいます。
テンピュール枕を洗ってしまったら
「えっ、洗えないなんて知らなかった。もう洗っちゃった」
といった方もいらっしゃるかもしれません。
「どうしたらいいの?」
「捨てた方がいい?」
慌てないでください。
まずはしっかり乾かしてみましょう。テンピュール枕はいわば巨大なスポンジのようなもので、中心部まで乾かすにはかなりの時間が必要。風通しの良い日陰で数日かけてしっかり水分を蒸発させます。
きちんと乾いたら、寝心地を確かめてみます。
洗う前と同じように、何事もなく使えるようであればOK。
逆に、包み込むようなフィット感がなくなってしまったりしていたらその時は思い切って使用を中止しましょう。
テンピュール枕の素材ウレタンが水に弱いのは事実ですが、それで毒性が発生するわけではありません。
ウレタンに水を加えると加水分解してしまいますが、言ってみれば酸とアルコールに分かれるだけのこと。人体に影響があるわけではありません。
テンピュール枕が汚れたときの洗い方
では、いったいテンピュール枕が汚れてしまった時、どうすればいいのか。
「洗えないなら諦めるしかない?捨てちゃう?」
それではもったいなさ過ぎます。
そもそも枕は毎日使い続けるものです。臭いがつくのは当たり前。汚れてしまうことだってあります。
いくら低反発で寝心地がいいと言ってもその度に買い替えていては大変です。
工夫次第でいくらでも対策はありますからご安心ください。
臭いはとれます。完全にとれない場合でも臭いを軽減する方法はあります。
汚れも大丈夫。対策はあります。
テンピュール枕が日本に上陸して随分と時間がたちます。「先人」たちが研究に研究を重ねてくれています。それを紹介していきましょう。
汚れてすぐ:濡らして絞ったタオルで揉む
汚れてすぐなら、濡らして絞ったタオルで揉むことで取れます。
枕って部屋の中でも低い位置に置くものそのため、意外に汚れてしまうケースが多いですよね。
「あっ、やっちゃった」
と、汚してしまって、すぐなら水です。
タオルに水を含ませ揉む方法が有効です。
汚してすぐなら奥の方まで汚れは浸透していないケースが多いそのため、かなりの確率で綺麗になります。
注意点はタオルを水で濡らしたあと、よく絞ることです。ぞうきんを絞るようにギュッと絞ったタオルで、揉んでみてください。
ウレタン素材は物理的な力に弱いため、ちぎれないように、優しく。あくまでも揉むという感覚を忘れないようにしてください。
もし、それでもダメなら水ではなく少しぬるいお湯を使ってみてください。ウレタンは熱に弱い素材のため、熱湯ではなく「少しぬるめ」というのがポイントですよ。
汚れは熱に弱いので、ぬるま湯で濡らしたあと、ギュッと絞って揉むように拭いてみてください。
臭いの取り方
臭いの取り方は、陰干し・カバーの洗濯・ファブリーズが有効です。
頭は体のなかでも口や脇などと同様、臭いがキツい部分です。
なぜなら頭を覆う頭皮は身体の中でも特に「皮脂」が多く分泌される場所だからです。
加えて汗(エクリン汗)をかきやすく、おまけに髪の毛で汗が蒸発しにくく場合によっては蒸れてしまって臭いが増幅されていることもあります。
頭を置く枕はその臭いがそのまま移ります。
「洗えないなら仕方ないや」では済まない臭いです。
この臭いを消すにはまず干すことです。カバーは剥いで洗濯し、枕本体は風通しの良い場所を選んで、枕が含む臭いを風で飛ばします。
そして強力な助っ人がファブリーズです。もしお家にファブリーズがあるなら是非、試してみてください。少し丁寧にふりかけ直射日光が当たらない風通しの良い場所で、干してみると意外にすっきり臭いはとれてしまいます。
おねしょ汚れの取り方
小さなお子様がいらっしゃる家庭なら、おねしょの汚れもあるかもしれません。
そんなときはクエン酸を使います。
おねしょの臭いの主役はアンモニアです。アンモニア臭はアルカリ性。酸性のクエン酸を使うと中和反応が起きて臭いを消してくれます。
除菌消臭スプレーを使うと逆効果になり場合によっては臭いがひどくなることもあります。
クエン酸は近くの100円均一ショップで売っているもので十分です。
粉状で袋に入って売っていますので、水に溶かしてスプレーを使って吹きかけてみてください。
作り方は簡単。スプレーボトルにまず水500ml。これにクエン酸25gを入れてよく混ぜ合わせます。
常温で置いておいても約1ヶ月間保存できます。
皮脂などの油汚れの取り方
皮脂などの油汚れの取り方は、重曹を使います。
頭皮から分泌される皮脂は油汚れと成分が似ています。そこで食器についた油汚れを落とせる重曹が有効です。
重曹はエコで環境に優しい。そして何よりお財布にも優しいのが特徴です。
100円均一ショップなどでも売られていて手軽に入手できますので、是非試してみて欲しいのですが、売られているのは粉状の重曹です。
粉状の重曹に水を含ませペースト状にして使用してみてください。布にペースト状の重曹を乗せ、軽くなでながら皮脂をこすりとっていくのです。
重曹の粉がテンピュール枕に残り、ざらざらするかもしれません。
しかし、気にする必要はありません。干して乾くと粉はパラパラと落ちていきます。パッパッと払えばそのまま落ちて綺麗になります。
血などタンパク質汚れの取り方
枕が血で汚れるケースは結構あります。
子供だけでなくお年寄りなども就寝中に鼻血を出すケースは少なくないようです。
血液汚れはタンパク質汚れともいわれ、時間が経つと水だけではなかなか落ちません。
そんな時、試して欲しいのがセスキ炭酸ソーダです。
セスキ炭酸ソーダも普通に100円均一ショップでも手に入れることができるエコで便利なアイテム。これから買うならスプレータイプがおすすめです。
弱アルカリ性で時間が経った血液にもかなり効果を発揮します。
水にとても溶けやすいのが特徴ですのでいった水に溶かしたうえでタオルに含ませ、テンピュール枕の汚れた部分を揉むようにふき取っていくのがお勧めです。
血液の汚れは、見ると「こりゃあダメだ」と諦めがちですが大丈夫です。
早ければ早いほど簡単に汚れは落ちますが、セスキ炭酸ソーダの威力は結構なもので、思ったよりさっと汚れがとれてしまいます。
カビ汚れの取り方
カビ汚れはカビスプレーを使います。
昔ながらのソバ殻の枕がかびるようなことはありません。
しかし、テンピュール枕は違います。条件が整えばかびることがあるのです。
カビ菌は湿度60%以上から活動し始め、70%で繁殖し始めます。80%を越すとさらにその勢いを増します。
食べ物のカスやホコリ、汚れ、ダニなどを栄養が整い、温度が25~28℃前後になるとどんどん増えていきます。
とはいえカビが生えてしまっても問題ありません。
カビスプレーを使えば簡単に落とすことができます。
少し希釈した塩素系漂白剤でもかまいません。
スプレーで吹きかけ、キッチンペーパーかラップを上からかけてしばらく時間をおきます。
カビ菌は組織の奥深くまで入り込んでしまっているケースもあり溶液が浸透するのを待ちます。
すっかり浸透したら、水を含ませた布でしっかりふき取り、あとは乾かせば完了です。
またカビが生えてこないようにしっかりと乾燥させるのがポイントです。
ダニ駆除方法
ダニを駆除するには布団乾燥機を使います。
テンピュールはダニが嫌いなウレタン製なので、ダニはつきにくいですが、可能性はゼロではありません。
ダニは温度が20℃~30℃で湿度が60%の場所を好み繁殖します。
人の皮膚や髪の毛がエサとなりますから枕は最高の生活環境といえるでしょう。
ダニの弱点は熱。50℃以上の温度になると死滅します。
そのため布団乾燥機で温風を当てることで、ダニは一気に退治することができるのです。
その後はハンディ掃除機などで死骸を吸い取ります。ダニは体が軽いため掃除機で簡単に吸い取ることができます。
そしてダニを除去してしまったあとはできるだけテンピュール枕の状態を清潔に保つことが大切です。
テンピュール枕を長く使うためのお手入れ方法
頭の位置を適切に保ち、高い品質の睡眠を提供してくれるテンピュール枕は価格も高い。
良い物ならば、できるだけ長く使いたい。長く使って元を取りたいですよね。
そのためにはとにかくお手入れです。
テンピュール枕はデリケートそのため手入れも丁寧に優しく。そうすればその分だけ長く使えます。
長く使うために気にかけるポイントは
・ダニが繁殖してしまわないよう清潔に保つ
といった心がけが必要になります。
では、具体的にどのようにお手入れをしていけばいいのでしょうか。
以下、細かく紹介していきましょう。
①陰干しで湿気対策
まずは陰干しで湿気対策をしましょう。
まず、テンピュール枕は中身がウレタン素材のため水分が大敵です。
そのためには湿気対策がとても重要です。枕は体の汗やヨダレ、涙などを吸収するため水分を吸収しやすく、こまめに干すのがお手入れのポイントです。
ただ、日陰で干すということを忘れてはなりません。
日光にさらすと紫外線の直撃を受けてしまい一気に劣化が始まります。夏日であればウレタンの大敵である高温状態に陥り、さらに劣化が加速します。
湿気はNG、こまめ干すことが大事ですが、必ず日陰でというのが鉄則です。
枕カバーを洗濯する(週1回程度)
テンピュール枕の構造は中身がウレタン、そしてその周りを綿やポリエステルのカバーで覆うというのが基本的なパターンです。
清潔に保つには洗濯が基本ですが、中身のウレタンは水に弱いため原則的に洗うことはできません。
しかし、枕カバーは別。洗うことができます。最低1週間に1度は洗うのが理想です。
寝具はダニの温床になりやすく、皮脂、汗、垢、それに髪の毛といったダニが繁殖するためのエサが豊富に付着しているためです。
中身のウレタンは仕方ないとしても枕カバーだけでも洗濯し清潔に保つようにすれば、ダニの被害はかなり軽減させることができます。
テンピュール枕が汚れたら交換や保証は使える?
格安の枕やクッションに比べればテンピュール枕はかなりの高級品と言えるでしょう。
購入するにはそれなりの覚悟が必要です。
それでも日々の疲れを癒やし明日も良い仕事をするために「えいっ」と奮発して買うわけそのため、ベタベタになったりボロボロになったりしたら交換して欲しいというのが人情です。
さて、テンピュールの枕は3年保証がついています。
しかし、残念ながら保証内容は「へたり」に関するもので、汚れは対象外です。
テンピュールの保証対象
製造工程あるいは素材に起因する欠陥、あるいはテンピュール®素材に 2cm 以上の明瞭な凹みが生じた場合。
テンピュール公式-保証(pdf)
枕の汚れは、
・2㎝以上の明瞭な凹み
のどちらにも該当しません。
そのため、汚してしまった場合は保証も交換もできません。
まとめ:テンピュール枕は汚さない使い方が大切
結局、テンピュール枕はできるだけ綺麗に使うのが大切だということです。
汚れれば対策はないわけではない。けれど完全に綺麗にはできません。
手軽に、そして安くクリーニングする方法はあるにはあります。けれど完璧というわけにはいきません。
まずはできるだけ汚さない。そのため、枕カバーやプロテクターを活用するなどして、できるだけ汚さないで使いましょう。