膵炎の犬にささみはあげても大丈夫
「膵炎」とは、膵臓から出る「膵液」と呼ばれる消化酵素が活性化してしまい、膵臓に炎症が起きる病気です。
膵炎になる主な原因は、普段からの高脂肪の食事、ゴミ漁りなどによるゴミや異物の摂取、高脂血症と言われています。
そのため、膵炎を発症した犬に対しての食事は「低脂肪」であることが重要なポイントとなります。
では、人間にとってもヘルシーな肉とされる「鶏ささみ」を膵炎の犬に与えても大丈夫でしょうか?
答えとしては、「あげても大丈夫」となります。
鶏ささみは低脂肪・低カロリーでありながらタンパク質をしっかり摂ることができる食品のため、膵炎で弱っている犬の療法食としても適していると言えます。
膵炎の犬には、茹でた鶏ささみを負担のないよう少量ずつ与えていくと良いでしょう。
犬の膵炎とは
膵炎には「急性膵炎」と「慢性膵炎」の二つがあります。
「急性膵炎」とは、その名の通り消化酵素が急激に活性化されることで、膵臓組織自体を消化してしまい、炎症が起きる病気を指し、「慢性膵炎」は、徐々に少しずつ膵臓に炎症が起き、膵臓が硬くなっていく病気のことを指します。
どちらも、初期症状では腹痛や嘔吐、食欲不振といった消火器症状が見られ、末期症状になると、眼の白目部分が黄色くなる「黄疸」が出たり、腎不全や糖尿病を合併したり、体内の免疫が狂い多臓器不全を引き起こしたりします。
膵炎の治療に特効薬はなく、治療法としては、膵臓の自己消化を食い止めるための点滴による輸液療法などの治療と、膵臓に負担を与えない低脂肪食への切り替えが中心となります。
犬の膵炎の食事は「低脂肪」が条件
犬の膵炎の食事管理においての第一条件は、低脂肪食に切り替え、低脂肪食を与えるようにするということです。
膵炎は、普段から高脂肪な食事を食べていて肥満がちな犬や、シニア犬に引き起こされやすい病気です。
そのため、膵炎の犬にはバターや動物性の脂など、脂肪分の多い高脂肪食や消化に悪い食べ物は厳禁です。
高脂肪食は、CCK(コレシストキニン)という物質の分泌を促進してしまい、それにより膵液の分泌を過剰にしてしまうためです。
膵炎の治療では、通常の治療と並行して、低脂肪食による食事管理を行っていくことが大切です。
低脂肪食に切り替えつつ、最初は食事量を通常の4分の1ほどに減らし、一日に複数回に分け食事を与え、数日かけて通常の分量に戻していくようにしましょう。
ささみに含まれる脂質はごくわずか
「鶏ささみ」は、低脂肪・低カロリー、高タンパク質で、犬にとって消化性も良いとされる鶏肉の部位です。
ささみは、鶏胸肉の奥にある筋肉の部分のことを言い、人間にとってもヘルシーとされる肉です。
白身で柔らかく淡白な味で、人間の料理では蒸し料理やサラダなどによく使われる部位です。
同じく低脂質とされる牛ヒレや豚ヒレと比べても、鶏ささみはさらに脂質・カロリーともに低く、高タンパク質であることが特徴です。
また、膵炎の犬に対して推奨される「低脂肪の基準」は「乾物量分析値で10%以下のもの」とされているのですが、その基準に照らし合わせた際、牛ヒレや豚ヒレはこの基準に当てはまりませんが、鶏ささみはこの基準にも当てはまります。
そのため膵炎の犬に対しては、鶏ささみ肉をベースに食事を与えたら良いとされています。
膵炎の犬にささみ以外の鶏肉は大丈夫?
肉には、牛肉・豚肉・鶏肉・馬肉などあり、その中でも部位によって脂質やカロリーの量、そしてタンパク質の量も変わってきます。
例えば牛肉でも、ステーキに使われるサーロインやリブロースは脂質が高くカロリーも高いとされていますが、それに比べ、ヒレ肉はその半分以下の脂質やカロリーとなります。
このように、同じ牛肉でも部位によって脂質やカロリー・タンパク質の量や含まれる栄養素が違います。
では、牛肉・豚肉に比べ、比較的脂質が少なく低カロリーとされている鶏肉ですが、ささみ以外の部位も膵炎の犬に与えても良いのでしょうか?
ここでは、各部位ごとに、膵炎の犬に与えても良いかどうか、またその部位の栄養素について等解説していきます。
胸肉はOK
鶏肉の部位の中で、ささみの次に脂質が低いとされているのが、皮なしの胸肉です。
鶏胸肉は、脂肪が少なく柔らかく、ささみ同様淡白な味が特徴で、人間の料理では唐揚げや焼鳥などに使われやすい部位です。
ささみも、老化を防止するセレンや鉄分を吸収して代謝するためのモリブデンなど栄養素が豊富な部位ですが、胸肉も、皮膚を健康に保つビタミンB群やナイアシン、血液凝固などの役割を果たすビタミンKなど様々な栄養素が含まれる部位です。
ささみの次に、高タンパク・低カロリー・低脂質な部位のため、ささみ同様膵炎の犬に与えても大丈夫な部位です。
ただし、胸肉にも皮つきと皮なしがあり、皮つきになると脂質が高くなってしまうため、皮なしを選ぶことが大切です。
モモ肉はNG
ささみや胸肉が白身で柔らかいのに対し、モモ肉は赤身でやや硬いのが特徴です。
赤身で脂肪が多いためコクがあり、人間の料理では煮込み料理やローストチキンなどにも使われやすい部位です。
モモ肉も、細胞の老化を防ぎ動脈硬化を防ぐ効果を持つセレンと呼ばれるミネラルなど、高い栄養素を含みますが、ささみや胸肉に比べると脂質・カロリーとも高くなり、かつ、摂取できるタンパク質の量が減ってしまいます。
なので、健康な犬であればモモ肉を与えても大丈夫ですが、膵炎の犬には与えるのを控えた方が良い部位と言うことができます。
健康な犬であっても、脂質が高く高カロリーなため、与えすぎると肥満などの要因にもなるので、与えすぎには注意が必要です。
皮はNG
牛肉・豚肉と比べても脂質・カロリーともに低くヘルシーなため、膵炎に与える食事として適している鶏肉ですが、それでも、鶏皮は他の部位に比べると脂質・カロリーがはるかに高いため、膵炎の犬には与えてはいけません。
100gあたりの部位別の脂質の量を比べた際、ささみの脂質が0.8gであるに対して鶏皮の脂質は51.6gにもなり、なんと約65倍の脂質を含むことになります。
この数字は、鶏肉と比べ脂質が高いとされている牛肉や豚肉の多くの部位よりも、さらに高い脂質となっています。
そのため、鶏皮を膵炎の犬に与えることは厳禁です。
また、低脂質な鶏胸肉であっても、皮つきになると脂質が高くなるため、皮のついていないものを選ぶことが大切です。
砂肝はOK
砂肝とは、鶏の「砂嚢」と呼ばれる部位のことで、鳥類が持つ胃の一部です。
砂肝は、人間の料理では焼鳥屋で串焼きとして食べられたり、砂肝の塩焼きといった料理で食べられることが多い部位です。
砂肝は、ささみの次に低脂質で、カロリーはささみより低いことが特徴で、ささみや胸肉同様、低脂質でありながら高タンパクを摂取することができる部位です。
また、砂肝には、体内に酸素を輸送するのに必要な鉄分や、皮膚や粘膜の健康を維持するために必要な亜鉛、エネルギー代謝を助けるビタミンB12など、豊富な西洋素が含まれます。
そのため、栄養素の面からも膵炎の犬に与えて大丈夫と言うことができます。
手作り食で砂肝を与える際は、外側を覆っている銀皮と呼ばれる白い皮は取り除いてから与えるようにしましょう。
まとめ:膵炎の犬の食事で気をつけること
膵炎の犬の食事で大切なポイントは、「低脂肪」「低糖質」「高タンパク質」となります。
高脂肪食は、膵液の分泌を過剰にしてしまい厳禁なため、食べてはいけないものとしては、バターや動物性の脂など、脂肪分の多い食品ということになります。
そして、脂肪分も、低脂肪なだけではなく、良質な脂肪を摂ることが大切です。
また、糖質も脂質同様控えるべきものであるため、甘いものやおかしを与えてはいけません。
低脂質でありながら高タンパクを摂取できる肉が鶏肉のため、膵炎の犬には鶏肉がおすすめです。
しかし、鶏肉も部位によって脂質量が変わってくるため、与える際は、ササミや皮なしの胸肉、砂肝を与えるようにしましょう。
膵炎の犬の治療は、食事管理が必須となるため、適切な食事や病気の犬用に作られた療法食を与えることが大切です。
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