膵炎の犬にりんごはあげても大丈夫
りんごは、約83%が水分でできています。
また、炭水化物が約16%を占め、他にビタミンやカリウムなどのミネラル、ペクチンやポリフェノールを含みます。
犬に害のある物質は含まれていないため、りんごは犬に与えても大丈夫です。
更にリンゴに含まれる脂肪は100gあたり0.3gと非常に少ないため、膵炎を発症して食事療法にて脂肪制限をしている犬にも、手作り療法食の食材の一つとして与えることができます。
リンゴに含まれる栄養素を簡単に説明します。
ペクチンは水溶性の食物繊維で、便通を良くしてくれると同時に腸内の善玉菌を増やして悪玉菌を排除する働きがあります。
そのため、腸内環境が改善し、免疫力アップにつながります。
ポリフェノールは抗酸化作用があり、体内で起こる酸化を防ぐことにより老化防止や病気の予防に役立ちます。
また、カリウムは体内の塩分を尿として排出する作用があり、高血圧を防いでくれます。
ただし、高齢や腎臓の機能が低下していると、カリウムの排出がうまくできずに、カリウムが体内に多量に溜まってしまい、痙攣や不整脈を引き起こす可能性もあります。
ですので、老犬や心臓、腎臓が悪い犬にりんごを与える場合は注意してください。
りんごのおやつも大丈夫
膵炎の犬にりんごを与えても大丈夫だと先ほど述べましたが、そのままでももちろん良いですし、チップスやドライフルーツにしたりんごを与えても大丈夫です。
ただし、人間用のものは、砂糖などがまぶしてあることがあります。
犬に調味料は全く必要ありませんので、人間用のものは与えないようにしましょう。
犬用で市販のものでも、中には調味料を添加しているものがあります。
あくまでもりんごの自然の甘みを愛犬に楽しんでもらい、かつりんごの栄養を摂取するために与えるわけですので、市販のものを選ぶ際は、無添加、そして安心の国産のものを選ぶようにしましょう。
チップスやドライフルーツにすることで、生のものを与えるよりも少量で済みます。
しかし、りんごには糖分が含まれていますので、与えすぎには十分に注意しましょう。
糖尿病を併発している場合はNG
りんごにはブドウ糖や果糖といった糖質が多く含まれています。
そのため、膵炎で更に糖尿病を併発している場合は、りんごを与えてはいけません。
膵臓からは、血糖値を上げる働きをするグルカゴン、血糖値を下げる働きをするインスリン、両者を抑制し調節するソマトスタチンというホルモンが分泌されます。
血中の糖分が細胞内にうまく取り込まれずに血糖値が上昇した状態が続くと、尿中にも糖分が出てくるようになります。
このような状態を糖尿病と言います。
糖尿病になると、細胞内に糖分が取り込まれないため、常に飢餓状態になり、食欲が増進しますが痩せていきます。
また、血中に糖分が多量にある状態では血流量が増えるため、水をたくさん飲むようになり、多飲多尿の症状を引き起こします。
糖尿病の場合、糖質を制限して、血糖値を急激に上昇させないように繊維質を多く含んだ糖尿病専用の療法食を食べさせることになります。
膵炎の場合は、糖尿病を併発している可能性がありますので、食事療法は獣医師の指示に従ってください。
犬の膵炎とは
膵炎は急性膵炎と慢性膵炎に分けられます。
膵臓は、消化酵素を分泌する役割があります。
膵臓で分泌されたトリプシノゲンは、十二指腸に分泌されて、消化機能をもつトリプシンになります。
しかし急性膵炎では、何らかの理由で、トリプシノゲンが膵臓内でトリプシンになってしまうことで、膵臓自体が消化されてしまうのです。
症状は、激しい嘔吐と食欲不振、そして腹痛です。
一方、慢性膵炎は、急性膵炎を繰り返したり、長期間かけて膵臓が侵されていくことで膵臓の炎症が慢性化している状態です。
症状は長期にわたる嘔吐や食欲不振、腹痛、体重減少などが挙げられますが、初期症状は乏しく、早期発見、早期治療が難しい場合もあります。
膵臓は、消化酵素を分泌する以外にも、血糖値を調整するホルモンを分泌します。
そのため、膵炎が進行し膵臓が機能しなくなると、末期症状として、糖尿病や血圧低下、意識障害等のショック状態を起こすこともあり、大変危険な状態となります。
治療法は、基本的に対症療法となります。
急性で激しい嘔吐がある場合は、しばらく絶飲・絶食させ、点滴をします。
点滴は、嘔吐により失った電解質を補給したり、また膵臓への血流を増やすことで炎症性物質を洗い流すことができます。
膵炎の場合は、早めに栄養摂取を再開させた方が回復が早いという報告があることから、吐き気が収まれば経口で栄養を与えます。
口からは無理な場合は、空腸にチューブを設置し、そこから栄養を与える方法もあります。
与えるものは、膵臓に負担をかけないよう低脂肪のものです。
また、症状によっては制吐剤や抗生物質を処方することもあります。
犬の膵炎の食事は「低脂肪」が条件
体内に摂取された脂肪は、十二指腸で胆汁によって乳化され、更に膵臓の消化酵素に含まれるリパーゼによってモノグリセリドや脂肪酸、グリセロールに分解されます。
このため、膵炎によって膵臓の機能が落ちている状態では、膵臓に負担をかけないように、食事は「低脂肪」にすることが必須条件となります。
膵炎の治療後の食事については、治療した獣医師から注意深く説明がありますので、しっかりと守ってください。
その際、食物アレルギーがある場合は必ず獣医師に申告しましょう。
食事以外のおやつは絶対に与えてはいけません。
また、牛乳は栄養豊富だと言って飲み物代わりに与える飼い主さんがいらっしゃいますが、牛乳は脂肪を多く含んでいます。
そのため、膵炎の場合は、たとえ低脂肪のものであっても飲み物代わりに牛乳を与えてはいけません。
りんごに含まれる脂質はごくわずか
りんご100gあたり、脂質は0.3gとごくわずかしか含まれていません。
そのため、膵炎を発症して食事中の脂肪を制限している犬にもりんごを与えることができます。
甘いりんごは犬も大好きなため、食事制限されている犬にとっては、ごちそうに思えるはずです。
また、膵炎では膵液の分泌が阻害されることで、脂肪以外にもタンパク質や炭水化物の消化にも影響が出ます。
しかし、りんごは消化しやすい食材ですので、そういった意味でも膵炎の犬にりんごを与えることは問題ないのだと言えます。
更に、りんごにはペクチンという食物繊維が多く含まれており、腸内環境を改善してくれます。
その結果免疫力も高まるため、りんごを食べることは犬にとって良いことづくめだと言えるでしょう。
ただし、与えすぎはよくありません。
おやつやトッピングとして少量与えるのが基本です。
膵炎の犬にりんごを与えるメリット
りんごには、豊富なビタミンやカリウムなどのミネラル、ペクチン、ポリフェノールなどが含まれています。
ポリフェノールに関して、りんごには約50種類のポリフェノールが含まれていますが、これらを総称してりんごポリフェノールといいます。
りんごポリフェノールは、人間には、老化や病気から体を守る効果、血流を改善する効果、口臭を予防する効果、アレルギーを抑制する効果、コレステロール値を下げる効果等があります。
そのため、りんごは「一日一個のりんごは医者をいらず」と言われるほど体によい食材なのです。
犬においても同様の効果が期待できますので、適量を犬に与えることで健康の維持につながります。
また、りんごポリフェノールはりんごの皮に多く含まれていますので、皮ごと与えるとより効果的です。
りんごポリフェノールの抗酸化作用
私たちが呼吸し取り込んだ酸素は、体の中で使われる過程で一部が活性酸素になります。
活性酸素は、普通の酸素と比較して細胞を酸化させてしまう力が強いものです。
この活性酸素は、体内の免疫機能や感染防御に重要な役割を果たす一方で、過剰に生じると、自身の細胞も傷つけ、体に悪影響を及ぼします。
具体的には、ガンや老化、糖尿病や脂質異常症、動脈硬化などの誘因となります。
活性酸素の働きを抑制することを「抗酸化」と言います。
体内でも抗酸化酵素は生成されていますが、年齢とともにその生成量は減少します。
そこで、過剰な活性酸素から体を守るためには、抗酸化作用を持つ食材を摂取することが重要なのです。
りんごポリフェノールは、強い抗酸化作用を持っているため、ガンや老化、動脈硬化を抑制する効果が期待できます。
りんごポリフェノールの脂肪排出作用
摂取した脂肪は、膵液に含まれるリパーゼという酵素によってモノグリセリドや脂肪酸、グリセロールに分解されます。
モノグリセリドと脂肪酸は、小腸で吸収されて血中にのり、中性脂肪として全身に運ばれます。
そしてエネルギーとして使用されなかったものは、内臓脂肪や皮下脂肪として体内に蓄えられるのです。
しかし、りんごポリフェノールは、リパーゼの働きを阻害します。
そのため、りんごポリフェノールを脂肪とともに摂取すると、脂肪は分解されずに脂肪のまま小腸へ流れていきます。
脂肪のままでは小腸からは吸収できないため、脂肪はそのまま便として体外へ排出されます。
よって、食事とともにりんごを食べることで、食事中の脂肪の吸収は阻害され、内臓脂肪や皮下脂肪がつきにくくなるのです。
膵炎の犬にりんごを与えるときの注意点
りんごには、豊富なビタミンやミネラル、ポリフェノールが含まれているため、体の健康を維持する効果があります。
また、脂肪はごくわずかしか含まれていないため、りんごは膵炎の犬でも食べさせることのできる果物です。
しかし、犬にりんごを与える場合には注意しなければならないことがあります。
まずりんごに限らずですが、果物や野菜の皮には農薬がついている可能性があるため、よく洗ってから与えます。
皮を剥いてから与えてもよいですが、りんごの皮にはポリフェノールがたくさん含まれているため、よく洗えば皮を取り除く必要はありません。
一方で、りんごの種や芯はきれいに取り除く必要があります。
更にりんごは、小さくカットするかすりつぶして与えるようにしてください。
それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。
注意点①りんごの種は取り除く
りんごの種には、微量ですがアミダグリンというシアン化合物の一種が含まれています。
このアミダグリンを大量に摂取すると、食後30分~1時間くらいに嘔吐や痙攣などの青酸中毒を起こす危険性があります。
特に小動物は少量でも中毒を起こすことがありますので、種は必ず取り除いて与えるようにしてください。
また取り除いた種は、犬が絶対に口にしないよう捨ててください。
盗食により飼い主が知らない間に犬が食べてしまう可能性があります。
更に、種や芯は固いため喉に詰まりやすく、また消化不良を起こすこともあります。
せっかく消化に良いりんごを食べさせていても、種や芯を十分に取っていなければ、消化管に負担を与えてしまうことになります。
以上より、犬にりんごを与える場合は、りんごの種や芯は取り除いて与えてください。
注意点②小さくカットするかすり下ろして与える
犬にりんごを与える場合は、例え大型犬であっても大きいまま与えてはいけません。
犬は食べ物を嚙みちぎることは得意ですが、歯の形状より小さくすり潰すことはあまり得意ではありません。
そのため、口に入れたものを丸飲みしてしまうことがよくあり、咽頭や食道に詰まらせてしまう可能性があります。
咽頭に詰まった場合は、窒息することがあり、大変危険です。
食道に詰まった場合も、沈鬱状態になり、何度も嘔吐しようとするが何も出てこない、よだれが大量に出るなどの症状が現れます。
このような症状が出た場合は、速やかに獣医師に相談してください。
このように食べ物を詰まらせるのを防ぐために、りんごはドッグフード一粒よりも小さい大きさにまでカットするか、すり下ろしてから与えるようにしてください。
注意点③量を与えすぎない
りんごに限らないことですが、一つの食材を与えすぎることは良くありません。
どうしても栄養が偏ってしまうからです。
また、犬が偏食になる可能性もあります。
よって、膵炎の犬にりんごを与える場合は、特に量を与えすぎないように気を付けてください。
膵臓は血糖を調整するホルモンを分泌する臓器でもあるため、糖尿病だと診断されていなくても、膵炎では糖尿病を併発する可能性が高いのです。
りんごにはブドウ糖や果糖といった糖質が多く含まれています。
糖質を摂取することで、血糖値を下げるために膵臓からインスリンを分泌しなければなりません。
しかし膵臓が侵されている場合は、このインスリンの分泌が正常にできない可能性がありますし、糖分を多く摂取することで膵臓に負荷をかけてしまいます。
そのため膵炎では、糖分の高い果物類を与える場合は注意が必要なのです。
まとめ:膵炎の犬の食事で気をつけること
愛犬が膵炎になってしまったら、必ず獣医師の指示のもと膵炎専用の療法食を与えましょう。
膵炎の場合は、膵臓に負担をかけないようにするため、低脂肪で消化のよいものを、食事回数を増やし少量ずつ与えます。
市販の療法食ももちろん販売されていますが、手作りすることもできます。
手作りする場合は、タンパク質は、ささみや鹿肉、馬肉などの低脂肪のもの、野菜はキャベツ、大根、ブロッコリー、りんごなどの消化しやすいもの、炭水化物もジャガイモ、米、うどんなどの消化しやすいものを選びましょう。